タイミングベルト・ウォーターポンプ
タイミングベルト の交換方法については整備書を参照してください.通常,カバー で覆われていて見えない場所で,交換の周期も長いので,交換手順や ネジ の トルク 管理等しっかり行う必要があります.ここでは整備書に載っていない情報を書いておきます.
- タイミングベルト を駆動する クランクシャフト タイミング プーリー ( 写真の下側にある軸に付いている ) は マイナスドライバー や 小さめの バール でこじれば取れます.隙間が狭いため,通常の プーラー の爪は入りません.
- タイミングベルト アイドラ プーリー ( 写真の青い物 ) はテンションをかけるためにバネで引っ張られていますが,アイドラ プーリーが動く支点となるピン ( 右写真の黄色の矢印部分 ) が外れていることがあります.アイドラ プーリー 自体は ネジ で固定するため ( 写真ではまだ固定していない.青いプーリー の真ん中にある横長の穴に ネジ が付く ),ピン が外れても タイミングベルト が ズレ ることはありませんが,外れた ピン が タイミングベルト カバー の下側に落ち,クランクシャフト との隙間で動き回り,タイミングベルト が少しずつ削れている事がありました.
カムシャフト 周りをいじるために,タイミングベルト を緩めるだけの場合 ( 通常,この場合は タイミングベルトカバー の一番下側を外さない為,ピン のところがよく見えない ),組み直して アイドラ プーリー でうまく テンション がかからない時は,下側の カバー を外して ピン を確認する方が良いです.
この ピン は圧入されているだけなので,振動や熱収縮で外れることがあるようです.今回は外れていたので,ロックタイト を塗って叩き込みましたが,結果を確認できるのは随分先のことだと思います.
- ハスコー の フックセット ( CP-98C-781 ) 等を使えば オイルポンプ を外さなくても,クランクシャフト オイルシール の交換が出来ます.
- ウォーター ポンプ の写真は約 15 万キロ 使用した物です.ポンプ 内はあまり劣化しないようです.軸や パッキン からの水漏れがなければ無理に交換しなくても大丈夫な感じです.ただ,ポンプ を固定する ネジ は結構錆びていました.ポンプ を交換するときは ネジ も注文した方が良さそうです.
- ウォーターポンプ の所に付く Oリング はあまり耐熱性が良くないようで,溶けて ペッタンコ になっていました.要交換です.
- フリー アジャスティング カム プーリー 等で バルブ タイミング ( バルタイ ) を変更している場合,クランクシャフト を正回転して 1 番 シリンダ 圧縮上死点に セット しても,タイミングベルト を外すと カム シャフト が回転して カム の位置がズレます.カム ロックツール 等で固定しておくか,バルタイ を ノーマル 位置に戻しておく必要があります.
- 間違えて タイミングベルト を 1 山分 位置がずれて取り付けても,エンジン をかければ アイドリング 時の音が通常とは違うのですぐに分かります.
パワステ ホース 2022.07
V リブド ベルト がたまに滑るようになってきたので,確認して見たところ,ベルト 自体は問題が無く,ベルト の上側を通っている パワステ高圧側ホース の カシメ 部分から オイル が漏れて,ベルト が滑っていることが解りました.
純正の交換部品は廃番になっていたため,対応策としては
- 使用しているを 高圧ホース を外して,修理を依頼する.← 1 週間くらいかかる.
- 中古品を手に入れて交換する. ← 交換時に漏れていなくても年式的に漏れる可能性が高い.
- 中古品を手に入れて修理依頼する. ← そもそも解体時に ホース 部分で切られることが多いため,中古品が出回っていない.
- 社外品を使用して修理する.
があります.今回は 4 の社外品に交換をしました.
参考までに 規格 や 使用した キノクニ の品番をまとめると,表の様になります.
番号 |
規格・長さ・個数 等 |
キノクニ 品番 |
① |
M16 ピッチ 1.5 AN6 変換 |
M16×1.5オス・ショート R991978S |
② |
AN6 オス - AN6 メス アダプター 90度 |
AN6 アダプター R921106 |
③ |
AN6 オス - AN6 メス アダプター 45度 × 2 個 |
AN6 アダプター R924106 |
④ |
AN6 テフロンメッシュホース ストレート - 90度 長さ 900 mm |
テフロンメッシュホース KFL900-0190 |
⑤ |
チューブエンド AN6オス - φ10.0mm |
チューブエンド R91107 |
⑥ |
AN8 ホース用 ホースバンド × 6 個 |
AN8 エコノフィッティング R108BK |
⑦ |
AN8 フレックス・ナイロンメッシュホース 長さ 1 m |
AN8 ホース 200-08 |
⑧ |
AN11 フレックス・ナイロンメッシュホース 長さ 1 m |
AN11 ホース 200-11 |
⑨ |
AN11 ホース用 ホースバンド × 4 個 |
AN11 エコノフィッティング R111BK |
各 部品 の 詳細 は以下のようになります.
①:パワステ ポンプ の排出側は純正では NA は フレア接続,GT-Z は バンジョー接続 になっています.クリアランス が大きく取れそうだったので,バンジョー接続 も試してみましたが,NA 用の パワステ ポンプ は フレア接続用 に ネジ 内部に突起があるため,バンジョー ポルト の ネジ 部分が干渉して固定出来ませんでした.ネジ 穴の深さは 約 10mm です.キノクニ には M16 ピッチ 1.5 - AN6 変換 アダプター で ネジ の長さが長い物も売っていますが,ショート タイプ の物でないと干渉するので注意してください.GT-Z も ネジ は M16 ピッチ 1.5 です.
④ ⑤:④ のホースを直接 パワステ ラック に接続することも可能です.その場合は キノクニの アダプター ( パワーステLo/P ) RP0616 を使用します.パワステラック の接続口は出入り口共に M16 ピッチ 1.5 です.
今回は パワステラック側 についている パワステクーラー の様な余剰部分を残すことにしたため,純正の配管を切って チューブエンド を取り付け AN 接続に変換しています.この部分は単に パワステラック側 で配管を固定して,接続部に負荷がかからないようにするだけかもしれませんが,GT-Z は ホース から直接 パワステ ラック に接続されている様なので,ちょっと 謎 です.
チューブエンド は写真の フェルール の先端が配管に食い込み,オイル が漏れないようになります.バックフェルール は配管に食い込むように フェルール の後ろ側を広げながら押す役割と ナット を締めるときの ワッシャー のような役割があります.フェルール と バックフェルール の順番や向きを間違えると漏れるので,注意してください.ナット の ピッチ で フェルール の移動量が決まるため,ナット の回転数で フェルール の食い込み具合を 管理 することが出来ます.その為に手で閉まるところまで閉めて,写真のように印を付けて回転数が判るようにします.
通常は メーカー側 で回転数を指定してありますが,車の場合は車種や使用場所によって配管の材質や強度が違うため,キノクニ にはこの指定がありませんでした.私は非力なので,1/2 回転しか出来ませんでしたが漏れてはいません.つまり,この場所は 1/2 回転以上締めれば漏れません.
キノクニ の ホームページ や カタログ には チューブエンド の フェルール が オリーブ という名前で説明されています.フェルール は チューブエンド の様な「食い込み継手」で標準的な Swagelok社 の名称です ( 名前が違うことに後で気が付いた ).Swagelok の継手は 化学プラント や 半導体製造,ロケット エンジン 等,多くの分野で標準的に使用されていて,フェルール と言う名前の方が一般的なため,そのままにしました.興味がある方は チューブ継手の利点 を参照してください.
純正配管の パワステラック入り口 に付いている Oリング は S-8 です.材質は NBR,硬度は標準的な 70 で問題ないと思います.
⑥ ⑦:パワステ ラック からの戻り配管は外径 φ10 mm です.AN8 ホース は公称で内径 φ11.1 mm ですが,AN8 でちょうど良いです.AN7 ホース ではきつくて入りません.ボディー側 に固定されている配管部分が 2 カ所有り,パワステ オイル リザーバー タンク に戻るまでに 3 カ所を AN8 ホース で接続します.キノクニ の フレックス・ナイロンメッシュホース を使用する場合,ホース の切断方法は キノクニ の ホームページ や カタログ に載っています.ホース に被さっている ステンレス メッシュ や ナイロン メッシュ がほどけて ささくれない ようにするために クリア・ラップテープ + ホワイト・アデッシブテープ SET ( 品番:RA1415S ) はあった方が良いです.
⑧ ⑨:パワステ オイル リザーバー タンク から パワステポンプ への戻り配管です.純正は一旦 ボディー側 に固定された配管を中継している為,2 本に分かれていますが,汎用の ホース は純正の ホース のように設置場所に合わせた曲げた形になっていないので,長さが短いと ホース をつなげるのが大変です.その為,今回は ボディー側 の配管を外して,リザーバー タンク から直接 ポンプ に戻すようにしました ( この場合,ホースバンド 4 個 → 2 個 ).それでも ホース を入れるのが,かなり大変でした.
この ⑧ の ホース 部分の オイル は タンク からの高低差で ポンプ側 に入っていくので,この部分に オイルクーラー のような抵抗になる物を設置する事は出来ません.パワステ オイルクーラーを付けたい場合は,ポンプ の排出口から リザーバー タンク への 戻り口 の間に付けます.
フューエル ホース 2018.12
フューエル 配管の高圧側は今のところ問題ありませんが,エンジンルーム から 燃料タンク に戻る,リターン側 の ホース は劣化して交換してあります.ホースバンド で止める ホース ですが,純正品は廃番になっています.
汎用品で問題ありませんが,材質が ガソリン対応 の物である必要があります.配管の外径は φ6 mm です.AN5 ホースは公称で内径 φ6.4 mm ですが,AN5 でちょうど良いです.AN4 ホースではきつくて入りません.
フューエル ポンプ 2011.08
突然動かなくなる以外に,なかなか交換の タイミング が分からない部品です.私の場合,前兆として
- ガソリン残量 が 1/3 程度になると燃料が送れなくなり,エンジン回転 が不安定になる.
- ガソリン残量 が少なくなってくると,水温,油温が通常より高くなる.
- 冬場,イグニッション オン で聞こえてくる ポンプ の音が一定でなくふらつく.
といったことがあり,部品調達を始めた頃,ガソリンスタンド に行く途中で動かなくなり,JAF のお世話になりました….ガソリン が半分以上残っていれば特に問題なかったので,しばらくはそのまま走っていましたが,精神衛生上良くないので,部品が揃い次第交換をしました.
吐出量の大きな輸入品の フューエル ポンプ が安く売られていますが,車で使用されている レギュレータ は簡易的な物で,インジェクター に加わる燃圧は フューエルポンプ の吐出量との バランス で決まります.そのため,吐出量の大きな ポンプ に交換すると,インジェクター からの燃料噴き出し量が変わり,燃調がズレます.ターボ車 等で インジェクター 容量を大きな物に交換していないならば,純正と同等の吐出量の ポンプ を使用するのが良いです.増やしても必要量以上の燃料は ガソリンタンク に戻るだけで,電気の無駄になります.
AE92 のフューエル ポンプ
吐出量 : 80 リットル/h
吐出圧 : 2.55 kg/cm2
交換作業前には燃料流失防止作業が必要になります.ただし,整備書に書かれているこの作業をしても,フューエル チューブ 内に燃圧のかかった ガソリン が残留しています.フューエル タンク の蓋を緩めて差圧を無くすことが必要です.差圧を無くすと チューブ を切り離しても,ガソリン がドバドバ漏れるようなことは無くなります.それでも チューブ や配管内に残っている ガソリン がそれなりに漏れるので,火気厳禁はもちろんですが,腕や足等にかからないように注意してください.ガソリンがかかると「かぶれる」場合もあります ( 急性毒性皮膚炎 ).
フューエル タンク の蓋を緩めるときに「プシュー」と音がしない場合は,蓋の裏についている パッキン が薄くなったりしていて,キチンと密閉されていない状態です.気化した ガソリン が漏れるので,臭いも漏れるし,燃費も悪くなります.パッキン ( 77316-12050 ) は蓋の裏についている ネジ を外せば交換できます.
交換時に分かった点,気がついたこと等 ( あくまで参考程度に )
- タンク 内に ガソリン が 1/3 程度残った状態で タンク を降ろしたが,さほど重くなかった.ただ,タンク 内で ガソリン が動くため扱いづらかった.出来ればカラにした方が良い.通常,タンク の上げ下げにジャッキを使用するが,ガソリン が タンク 内に残っている場合は,ジャッキ よりも厚さ 5 センチくらいの板や,雑誌を左右に重ねて一段ずつ出し入れする方がやりやすかった.
- タンクを降ろす時,給油口側の ホース が堅く外すのが難しい.クリアランス を確保するためにも,給油口側の パイプ を予め外してから作業するのが近道.
- 新品を用意しておいた方が良い部品 ( 値段は当時の物なので変わっています )
フューエルポンプ ( 23221-16440:28800円 )
フューエルポンプ フィルタ ( 23217-16390:680円 )
フューエルポンプ フィルタ クリップ ( 23229-16010 ) ← 内歯の ワッシャー のような形
フューエルポンプ クッション ラバー ( 23249-74150:740円 )
フューエルポンプ ブラケット ガスケット( 77169-16020:320円 )
フューエル ゼンダゲージ ガスケット( 83361-32020:150円 )
フューエルタンク リザーブ チューブ ガスケット ( 77179-16010:330円 )
フューエルタンク フィラパイプ ガスケット ( 77178-20010:390円 )
インレット パイプ フューエル ホース No.1 ( 90445-22024:1020円 ) ← 給油時の空気抜き ホース
基本的に滅多にする作業ではないので,下準備はしっかりしておきましょう.
アイドルプーリー 用 ベアリング
V リブドベルト の張力調整をする アイドルプーリー から キュルキュル という異音がする事があります.通常は アイドルプーリーASSY ( 88440-32030:5000円弱 ) での交換ですが,異音の原因は ベアリング 不良なので,ベアリング交換 ( ~ 500円 弱 ) だけでも異音は改善されます.
使用している ベアリング は NSK 6301DU2 という物です.ただし,この ベアリング は メーカー特注 なのか 一般には売っていないようです.
NSK の ホームページ で調べてみると 6301 は ベアリングサイズ を表す品番.DU2 についての説明はないですが,DU は片側接触 ゴムシール 付き,DDU だと両側接触 ゴムシール 付き という意味のようです.
6301 シリーズには他に 6301VV ( 両側非接触 ゴムシール 付き ) と 6301ZZ ( 両側鋼板 シール 付き ) があります.非接触形の方が摩擦が少なく高速性が良好ですが,防塵性や防水性は接触形より劣ります.
私の AE92 の エンジン下部 は,アンダーカバー でほぼ覆われているため,水で濡れることがないため,現在使用しているのは VV タイプ の物でが,通常は DU タイプの方が良いかもしれません.
ベアリング は プーリー に圧入されているため,取り外しや取り付け時には プレス機 が必要になります.取り外しは ハンマー でも構いませんが,取り付け時には プレス機 や ベアリング インストーラー,オイルシール インストーラー による圧入がお勧めです.ハンマー で叩いて入れることも可能ですが,圧入した方が何倍も長持ちします.